Untitled

■平成22年12月5日/駕与丁公園/開始10時/
○長尾軍団7-5 N.ライオンズ●

NL :1 0 0 3 0 0 1: 5
NG :3 4 0 0 0 0 x: 7

敗・松山6勝6敗1S
松山・久保・美澤—府後

【経過】
“草野球界の除夜の鐘”……毎年恒例、長尾軍団とのNL今季最終戦は、例年に負けず劣らず、白熱の好勝負となった。
12月とは思えぬ陽気にも誘われ、『この大一番を観ずして今年1年は終われない』という多くの野球ファンで球場は埋め尽くされた。
両チームの選手が球場入りし、試合前練習が始まった段階から、場内のボルテージは最高潮。
長年かけて築き上げた両チームの“名勝負数え唄”が世間一般に浸透している証だ。

その甲斐あってか、各選手(一部を除く)チームプレーに徹する事で、有終を飾る最終戦に相応しく素晴らしい試合内容が生まれた。
先手を奪ったのはNLだ。初回、トップの久保が追い込まれながらも“らしい”当たりでセンター前にクリーンヒット。
盗塁も決め、1死から松山が“お約束”の死球を誘発。序盤からいきなり場内を沸かせると、このビッグチャンスに打席は“四番”美澤。
渾身のスイングも、『やっちゃったか〜』力んでセカンドフライ。
チャンス潰えたかに思われたものの、ここで迎えるは今季もアグレッシブな打撃でNL打線を支えた小田。
鮮やかにすくい上げた打球はレフト線を襲う先制タイムリー。

巧みなベテランのバットコントロールで1点をもぎ取るもその裏、先発マウンドに上がった“NL左腕エース”松山が大誤算。
年々球威が増す直球が決まらず、変化球も抜ける苦しい投球。味方の手痛い失策も絡み2回までに7点を失い、勝負あったかと思われたものの、
ここから見せ場を作っていくのがNL・No Limit打線の真骨頂だ。

初回の1点から沈黙を続けていた打線は4回、1死から美澤が今度は1打席目の借りを返すレフト線への長打コース。
二塁打と思わせて一塁に止まった四番へ称賛とブーイングが飛び交う中、続く小田が今度はキッチリおっつけてライト前に運び得点圏を演出。
直後には吉武が痛烈にライト前タイムリー。昭和レジェンド“NLヤマハブラザーズ”の連打で2点目を叩き出すと、
火が点いたら止まらない打線はさらに府後が右中間を深々と破る2点タイムリー二塁打。
炎の4連打で点差を一気に3点に縮めると、二番手としてマウンドに上がった久保、
さらにラスト2イニングは“守護神”美澤の登板で流れを引き戻しに掛かった。
3点差とは思えぬ緊迫した展開のまま最終回、やはり勝負のヤマは最後に訪れた。

『死んでも出塁だ〜』という極めて難易度の高い命題を課せられた先頭のMG深町。捨て身で叩きつけた打球はショートのエラーを誘い、
執念の出塁に成功。個人記録よりもチームの勝利に邁進する男らしいプレーで繋ぐも、後が続かず2死二塁。

しかし、首の皮一枚の土壇場から驚異の粘りを見せる打線は、岸本がベテランらしく小賢しい当たりでセカンド内野安打をもぎ取った。
これがタイムリーとなり2点差。

松山が“当たり納め”となるこの日2個目の死球を受け成仏しチャンス拡大。一発が出れば土壇場逆転の場面。
球場を囲む大観衆のどよめきと共に、四番・美澤が打席に向かう。今季ここまでまさかのノーアーチ。最後の最後でやっちゃうのかバカヤロ〜
…と期待されるも、打ちたい気持ちを我慢し、ヒーローになりたい自我を捨て去って四球を選び2死満塁に!
打席にはこの日3安打猛打賞、既にこの時点でNL2010年度の首位打者が確定している小田。アラフォー世代希望の星が、有終の美を飾るのか!?
この日一番のハイライト、伝説のスクワット1日2000回で鍛え上げた下半身からの“うねり打法”で捕らえた打球は、ショート正面へのゴロ……。
まさに最後は駆け引きなしのぶつかり合い、草野球の真髄、パブリック魂を魅せた。

試合後は両チームの選手同士健闘を讃え合い、観客からは惜しみない拍手が贈られた。
どちらが勝者でも敗者でもない、美しい光景がそこには広がっていた。
この日で全日程を終了したNLナインは来季開幕までの束の間の休息を迎える。
カリブ海に浮かぶ故郷に帰省する者、早くも自主トレと称して山ごもりする者、
NL100安打達成まで残り1安打となり気合いのスクワットを繰り返す者……それぞれのオフ、NLのストーブリーグもシーズン同様に熱い!!

■平成22年11月28日/社領南/開始9時/
△N.ライオンズ 2-2 プレイボーイズ△

PB :0 0 0 0 0 1 1: 2
NL :0 2 0 0 0 0 0: 2

SUN・美澤—GO池田

【経過】
1週間前とは打って変わり、寒波吹き荒れる中での練習試合。
しかもゲーム前からグランドコンディションは最悪だ。前夜から降り続いた雨の影響で、水たまりも見られた中、
NL首脳陣自らグランドキーパーとなり試合開催へ尽力。球場管理人の好意もあって無事、ゲーム開始に漕ぎ着けた。

主力オーバーホールの影響で前週2名に引き続き、この日は府後、安達、松山、安井という投打の柱を欠く苦しい布陣。
首脳陣のやりくりで試合開催には何とか持ちこたえたものの、果たしてゲームを作れるのか……不安が脳裏をよぎる。

ところがそんな心配も何のその、先発マウンドに上がった今季2度目の先発SUNが、立ち上がりから快調なピッチングを披露。
カリブの海賊を彷彿とさせる荒々しいその風貌とは裏腹に、『長袖ダメなんッスよ』と繊細な面を見せ真冬でも半袖アンダーシャツでの力投。
際どいコースに力強いボールを次々と決め、強力相手打線に付け入る隙を与えない。

2回、GO池田が死球を浴び先頭出塁。さらに1死から吉武の痛烈なライト前安打でチャンス拡大。
ここで迎えるは、規定打席に到達し打席での貫禄十分のMG深町。吉武の二盗成功で1死二、三塁から、
キッチリおっつけたボテボテのセカンドゴロ。難なく三塁走者を生還させる事に成功。

『俺が俺が』のNL野武士軍団にあって、常に自己犠牲のチーム打撃に徹するMG深町の一打で1点を先制すると、
岸本がベテランらしく厳しいコースをことごとく見送り、執念の四球で繋ぐ。

このチャンスにトップの久保がパンチ力を生かした打撃で左中間を破るタイムリー二塁打。
三走・吉武に続き、一走・岸本も老骨にムチ打つ激走で本塁突入。クロスプレー……にもならずタッチアウトで憤死。
満身創痍のベテランに対して容赦ないコーチャーの突入指示も実らず、2点リードのままゲーム中盤へ。

観る者を寒々とさせる半袖のSUN自身は、熱いハートで燃えたぎるようにマウンド上で力投。
1死満塁の窮地を切り抜けると、全く危なげない投球で無失点を続けていく。

慣れない長いイニングの投球で下半身に張りが出たSUNは、6回に1点を失うも6回1失点、2勝目の権利を持って降板。
最終回は1点リードの場面で“守護神”美澤が威風堂々とマウンドへ。
しかし、高めに浮く投球を最後まで修正できず、土壇場で同点に追い付かれてしまう。

今季2度目のサヨナラ勝ちを決めたい打線はその裏、先頭の岸本がここも執念で出塁を果たすも、後続が倒れゲームセット。
結局引き分けに終わった。
今季残りゲームはあと1試合。個人タイトルにも注目が集まるが、誰もが気になるのはその“最高峰”M.I.P.の行方。
果たして、“草野球界の日本レコード大賞”の栄冠は誰の手に……。NL2010の戦いはまだ、終わらない。

■平成22年11月21日/雁ノ巣10/開始13時/
○S・フィールダ-ズ 7-2 N.ライオンズ●

SF :2 2 0 3 0 0: 7
NL :0 0 0 1 0 1: 2

敗・安井0勝1敗
安井・松山—府後

【経過】
今年も残すところあと3試合。そろそろ個人タイトルの行方にも注目が集まる時期に差し掛かった。
この日はリーグ戦の激闘の疲れを癒す為、NLきっての主砲・美澤、ベテラン・小田の主力は欠場。
初対戦となる相手との練習試合は、試合勘の鈍い状況下で行われる事となった。
この日の打順は首脳陣の計らいで、大幅に動いた。
日頃、恐怖の下位打線を担うMG深町が、規定打席到達を目指し2番へ昇格。
今季、開幕から大躍進を遂げ、相手チームが繰り出すエース級をことごとく粉砕。自身最高の成績となる事が確実なだけに、
ここは是が非でも規定打席に到達したいところ。

不動の四番不在の緊急事態にはSUNを抜擢。今や名実共に“NLの顔”に成長しただけにここは来季への四番挑戦、
美澤への下剋上を仕掛けたいところだ。
クリーンアップには松山が昇格。エース投手としての存在感は他を圧倒するものの、その類い稀な打撃センスも首脳陣からのお墨付き。
抜擢とは呼ばせぬ左の大砲覚醒へ、結果を残したい。
また、NL育成選手枠から中津をスタメン6番に抜擢し、来季テスト。トライアウト同様、内容も含めた大勝負となった。

先発は安井。今やNL投手王国の一角を担うまでに成長し、来季にかける決意は凄まじいばかり。
シーズン終盤の厳しい悪コンディションの中、4回7失点とやや精彩を欠いたものの、持ち味を十分に生かした投球内容を見せた。
試合は4回に相手ワイルドピッチ、6回にMG深町のサードゴロの間にそれぞれ得点。

各選手とも結果より内容を重視した展開で、残り2試合を戦い抜いていく。

■平成22年11月7日/雁ノ巣7/開始13時/
○N.ライオンズ 9-2 マンスリー・マッスル・クラブ●

MMC :0 1 1 0 0 0 0: 2
NL :1 0 0 0 2 6 x: 9

勝・SUN1勝0敗
S・松山6勝5敗1S

SUN・松山—府後
打・SUN1

【経過】
一年間のリーグ戦を戦い終えたNLナインは、束の間の休息を挟み早くも来季に向けての始動を開始した。
注目のドラフト会議では今年もNLからの“隠し玉”は指名されず、全選手残留のまま秋季練習を開始。
『秋は鍛え直す』
首脳陣の宣言通りに過酷さを極め、この日久々の対外試合前には激やせする者、老け込んだ者、泥酔する者等が後を絶たなかった。
そんな状況下、各選手それぞれが早くも来季に向けての“答え”を出し始めた。暦の上では“立冬”。しかし、冬を感じさせないこの日の気候同様に、
来季に懸けるNLナインの士気は高まるばかりだ。

その中でもこの日、指揮官のサプライズ起用かと思われたのが、SUNの2年振りとなる先発登板。
前回はマウンドの厳しさを味わい初回KO降板。持ち前の打撃力と自慢の強肩を生かす為クリーンアップとして外野手専念を決意。
二度とその土を踏む事のないであろうと思われた男が、マスコミをシャットアウトした中、極秘に首脳陣との二人三脚による復活ロードを歩み、
今、リベンジの舞台へと足を踏み入れようとしていた。

その“伝説の超獣”を思い起こさせる風貌に澄んだ瞳……故郷・石垣島からイカダを漕いで亡命し、
NL入団を果たしたSUNの姿が昨日の出来事のように脳裏に浮かぶ。
そんなハングリー精神の塊から放たれたオーラで、相手打線へと立ち向かって行く。
その立ち上がり。2年前とは別人のようにテンポ良く、力強く、制球力抜群のSUNがそこにはいた。

初回を簡単に無失点に切り抜けるとその裏には、待望の先制点をプレゼント。そしてここにも来季に向けての“答え”を出した男がいた。
1死一、三塁から“NL不動の四番”美澤が放った打球は、左中間を深々と破るタイムリー二塁打。今季は長いスランプに悩み苦しみ、
激やせ(当社比)が伝えられた男が魅せた打席は、長らくお待たせとなっていた史上3人目となるNL通算100安打達成のメモリアル打となった。
先発のSUNは2、3回に1点ずつ失い逆転を許すも、抜群の安定感でゲームを支配。

そんなSUNの力投に応えたい打線は5回、それまで右のサイドハンドから繰り出す相手投手に苦しめられていたものの、
思わぬ“秘策”で劣勢を挽回。
1死二塁から“冬になっても気分は熱いMAXファクター”安井が、びっくり仰天の左打席に入り、『ボールが見易いからね』と
力強く放った打球がライトオーバーとなる同点タイムリー二塁打。2死となるも今度はSUNが得意の右打ちへ。
これが微妙な当たりとなるもライトの前にポトリと落ちる2点タイムリー。徹底して相手ライト守備を狙い打ちし、一気に逆転に成功。

ライトを守っていたのは人数調整により人的貸出中の府後。『え?SUNの当たり?紛れもなくヒット性だったね。…誰が見ても』と
ベンチに逃げ帰るように戻る姿に、ただ事ではない事情を察知した。

思わぬ形でゲームの流れを掴むと、6回には1死から6者連続出塁。まずは久保がレフトオーバーとなるタイムリー二塁打。
続く岸本は振り逃げにより一塁へ全力疾走。老骨にムチ打つ主将の姿が打線に勢いをつけ、安井の押し出し四球、
美澤がこの日2本目となるセンターオーバーの2点タイムリー二塁打、小田が痛烈な打球でレフト強襲となる2点タイムリー。
吉武にもレフト前安打が飛び出して、この回5本の長短打を集中させ6点を奪い勝負を決めた。

勝ち投手の権利を得てマウンドを降りたSUNに続き、6回からは“エース”松山がリリーフ登板。左右の競演で相手打線の目方を外し、
2イニングを無失点に抑えた。
チームは磐石の投手リレーと、秋季練習で振り込んだ好調な打線で快勝。試合後、引き揚げるNLナインの輪の中には、『……終わったんスか?』
と、試合に参加しながらも二日酔いの為、ベンチ裏で瞑想に時間を費やした安達の姿も忘れてはならないだろう。

■平成22年10月17日/雁ノ巣5番/開始15時/
○早良区LOVE 7-6 N.ライオンズ●

NL :3 1 0 1 0 0 1: 6
SL :0 2 3 2 0 0 X: 7

敗・美澤3勝1敗
美澤・安井—翔平

【経過】
前週のプレーオフ・ブロック準決勝を制し、Bブロックファイナルステージのに進出。
この日はいよいよブロック代表の座を懸けての大一番を迎えた。
『ここまで来たら小賢しい“策”は無い。ガチだよ』と力強く語る指揮官の熱い決意に応えるかのように、試合開始早々からNL打線が爆発する。

先頭の久保が集中力の高さを物語るようにレフト前安打で出塁。すかさず盗塁を決めると、
次打者の岸本が右方向に進塁打を決めたい場面だったがショートゴロ……しかし気持ちが打球に乗り移ったかのように、相手エラーを誘い、
なおも攻撃の手を緩めない。
好調の安井が冷静に四球を選ぶと無死満塁とし、この絶好機をキッチリ四番に回す。それがNL・No Limit打線の真骨頂だ!

ここ最近の“四番”はNL入団以来最長のスランプに陥り、貫禄の肉体も萎み気味……
だが、どんな事があろうとも四番を外さない首脳陣の期待に応えたい美澤が放った打球は、痛烈にレフト前に達する先制の2点タイムリー。
主砲の殊勲打で俄然盛り上がりを見せるNLベンチ。
この勢いに続きたいSUNはセンターへ高々と打ち上げての犠牲フライ。前週の勢いそのままに初回3点を先制し主導権を奪った。

するとその裏、今日こそエース・松山が先発のマウンドに上がるかと思われたが、この日も重厚なシルエットは背番号18・美澤が登場だ!
ポストシーズン大一番でノーヒットノーランの大記録達成から1週間、ベンチはNLの切り札と心中覚悟でV奪回に乗り出した。

しかし、中6日のマウンドとなったこの日は、前週力投の疲れが見られるかのような不安定な立ち上がり。初回からピンチを招いてしまう。
ここで美澤を救ったのは、NLが誇る鉄壁の外野陣。
相手走者が二盗。捕手からの送球が逸れる間に三塁を陥れられ……いや、しかし、そこはカバーに回ったセンターのSUNが猛然とダッシュし、

“石垣島レーザービーム”!

走者を三塁で刺すとこの回を無失点で切り抜け、幸先の良いスタートを切った。
2回1死からMG深町。“秘策”はなくても“暗示”はある…指揮官から『お前ならやれる』と唱えられ打席に立ち、見事に右中間を破る二塁打。
続けてキッチリ進塁打を放ち、恐怖の下位打線がチャンスを拡大。相手チームにプレッシャーをかけていく。

すると久保が放ったサードゴロを三塁手がファンブル。タイムリーとなり4点差、NLベンチは完全に流れを掴んだ
……かに思われたものの、思わぬ展開に雲行きが怪しくなっていく。

初回を切り抜けた美澤だったが2回、まさかのレフトスタンド大アーチを浴び2点を返されリズムを崩してしまう。
3回には連打を浴び、内野陣のエラーも絡んで3失点。遂に逆転を許し、このままズルズルいってしまうのか。

しかし、ここからプレーオフ突破に執念を見せるNLの底力が発揮される。
1死から吉武がショートオーバーのセンター前ヒットで出塁すると、『秘策じゃないよ、当然のプレー』と言わんばかりに、
続く府後の打席で初球エンドランを仕掛けた。打球は一二塁間を破りライト前に達し、1死一、三塁に。
さらに松山が執念でライト前に運ぶタイムリー。一気呵成の3連打で同点に追いつき、ゲームを振り出しに戻した。

こうなると美澤の右腕が唸りを上げ……てほしいところであったが、前週の疲労が蓄積し、いつもの球威・制球に陰りが見えてしまう。
まさかの2点を勝ち越され、とうとう万事休す……かと思われたものの、この一戦にかけるNLナインの執念はハンパではない。

5回からは限界点に達した美澤を諦め、“快速MAXファクター”安井がリリーフ。5、6回を無失点で抑え、いい流れで味方の反撃を演出する。
そうなると、黙っちゃいられないのがベテランの性分。6回、2死ながら何としても塁に出たいところ。
ここで吉武は『肘に当たってでも出塁だ!』とばかりに、リストバンドを肘付近までたくし上げ、玉砕覚悟で打席へ。
ところが初球にまさかの右足脛直撃の死球!『足かよ』ともんどり打って二転三転……時代劇の斬られ役さながらの名人劇場で出塁を果たすと、
盗塁。抜かりなく得点圏を演出するも、後続が倒れ無得点。

そんな執念も遂に終わりを告げるのか……ところがここで終わる訳にはいかないとばかりに最終回、大きなドラマが待っていた。

2点差を追う最終7回先頭で、『当たるのなら任せて下さい』とばかりに“元祖・死球王”松山が玉砕覚悟で打席に立つも投球が体付近に来ない。
『ならば打つべし』と執念でバットに当て見事ライト前に運び無死一塁。続くMG深町も続けとばかりに痛烈な打球で一二塁間を破るも、
前進守備のライトに処理され一塁アウトに……。
まさかのライトゴロに倒れチャンス潰えたか……に思われたが、そうはさせじと右中間を破るタイムリー二塁打で1点差。沸き上がるNLベンチ。
この勢いに続いた久保が気持ちでレフト前に弾き返しチャンス拡大。土壇場で一打同点、そして逆転の舞台を演出だ!

こんな痺れる場面で登場したのは、主将・岸本。誰もが思いを馳せたのは同じであろう。
そう、相手チームも同じ今年の4月18日、山王公園で放った岸本のサヨナラタイムリー……走馬灯のように駆け巡るあの場面。舞台は整った。
総ての視線が集中する中での打席は、まさか、まさかの止めたバットに当たるピッチャーゴロ……。
2死となるも、打席は安井。ここ一番のパンチ力はNLトップクラスだ。運命の一球!打球は上がった……が、力ないピッチャーフライに……。

総てを出し尽くし、NL2010年のパブリックリーグは幕を降ろした。
僅かに及ばず……が、頂点を目指すには険しい道のりである事もわかった。
秋季練習から春のキャンプへ、そして来季のV奪還に向け、NLナインの挑戦は続いていく。

■平成22年10月10日/駕与丁公園/開始16時/
○N.ライオンズ 5-0 グラディエーターズ●

NL :0 1 2 1 1 0 0: 5
GA :0 0 0 0 0 0 0: 0

勝・美澤3勝0敗
美澤—翔平

打・府後1

【経過】
パブリック・リーグもいよいよ大詰め。秋深まる駕与丁で、運命のプレーオフBブロック準決勝を迎えた。
初戦の相手は一昨年よりリーグ連覇を達成した強豪チーム。
前に進むには絶対に避けては通れない相手とばかりに、球場入りしたNLナインは皆一様に闘志みなぎる表情だ。

この日も試合前、ブルペンでは指揮官が見守る中、NL自慢の投手陣が最終チェック。
そして先発マウンドに登るのはこの一年、NL投手陣を引っ張ってきた“左腕エース”松山であると、評論家の誰もが予想した。
ところがその松山はマウンドを横切りレフトの守備位置へ颯爽と駈けて行く。まさかの先発回避だ。
ではこの大一番のマウンドに上がるのは一体、誰なんだ!?ざわつく場内を切り裂くようにノッシノッシと貫禄のシルエット……
NLの切り札とも呼べる絶対的守護神・美澤だ!!

どよめきの大歓声とは裏腹に、いつものクローザーとしてではない、まっさらなマウンドへ。静かなる闘志を内に秘めた美澤は、
初回からエンジン全開で相手打線に立ち向かって行く。
捕手とのコンビネーションも抜群で、往年のピッチングを思い起こさせる躍動感…見事な立ち上がりを見せた。
そんな美澤の男気に対して、NLナインは攻守に渡り強力にバックアップしていく。

2回表、1死から小田が際どい投球に対し抜群の選球眼で四球を選ぶと、ベテランらしからぬ脚力で盗塁を決める。
続く吉武の進塁打で小田を三塁に進めると、府後の当たりはサードへの難しい打球となり執念で三塁手の失策を誘うと、待望の先制点を奪った。

続く3回にはラストバッター・翔平のセンター前安打で口火を切り、得点圏に走者を置いて迎えるは、
“ここぞの時に何とかしてくれる男”主将・岸本。
往年の背番号7、レオ戦士のリーダーを彷彿とさせる当たりで三遊間を破ると、レフト前に達する鮮やかなタイムリー。
主将自らチームを鼓舞する貴重な追加点を叩き出した。

さらに相手投手の制球難に突け込み2死満塁。この最高に美味しい場面で打席に迎えるは“♪子供の頃からエースで四番で霜降り牛〜♪”美澤。
やる気が充満し過ぎていつも以上にビルドアップされた肉体から繰り広げられるパフォーマンスの行方は……
何と、的が大き過ぎたのが幸いとなったか、背中へドスンと突き刺さる押し出し死球!
痛みに悶絶する当人を尻目にベンチは拍手喝采大歓声。貴重な1点を加えリードを3点とした。

4回には2死無走者から松山の四球を皮切りに、満塁とし相手投手を追い詰めると、“燃える赤い獅子”久保。
押し出し死球を浴びながらもガッツポーズ。チーム一丸となって4点目をもぎ取ると、5回には圧巻の走塁を見せダメ押し点を
奪いに掛かった。

先発投手を前のイニングで引きずり降ろすと、この回先頭“尖閣諸島問題で上海ハニーに逢えずとも気分はMAXファクター”安井が、
代わった二番手投手の剛速球をものの見事にジャストミート!打球はレフト頭上を超える二塁打でチャンスを演出すると、
1死となるもSUNの一本間に絶妙な内野ゴロで『狙っていた』安井が捕手不在でガラ空きとなった本塁を陥れる好走塁で生還し、
ベンチはお祭り騒ぎだ。まさに往年のレオ軍団を彷彿とさせるかのような“伝説の走塁”で貴重な1点を叩き出した。

ディフェンスも全く抜かりがない。美澤のコーナーを突く巧みな投球術が冴え渡るも、際どいコースが外れ走者を許してしまう。
しかし、NL鉄壁の外野陣がこのピンチを救う…“リアル・カリブの怪人”SUN!
打球はセンター前に強い当たり。猛然とダッシュしチャージをかけたSUNが、二塁めがけて“石垣島レーザービーム”!
『春のキャンプの時から、一年に一回あるかないか、のプレーを繰り返し練習してまッス』というSUNの頼もしい一言で、
一塁走者を二塁封殺…前代未聞のセンターゴロに仕留める大ファインプレー!奮闘する美澤を強烈に、そして強力に援護していく。

そんな美澤も走者を許しながらバッテリー間の絶妙なサインプレーにより、隙あらば一塁走者を牽制で刺し、流れを渡さない。
5回には2死ながら得点圏のピンチを招き、打球は一二塁間を襲うゴロ……遂に失点を許すのか!?……しかし
セカンド岸本が回り込んで追いつく態勢だ。ファインプレーでヒーローか!?……主将の脳裏に黒い計算がよぎるも、その前にまさか、
まさかの、打球が一塁走者直撃。判定アウトにより皆、ベンチへ静かなる退散。
『追いついてたのにな……』主将の無念の嘆きがいつまでもベンチ内に響き渡った。

6回には美澤が体型同様、自らの“一人相撲”で1死満塁の大ピンチを背負い込むも、ここは球威でキャッチャーゴロ…2→3と渡る併殺に
仕留め、最高の形で切り抜ける。

結局、美澤は粘りの投球で最終打者を三振に仕留め完封でゲームセット。気がつけば無失策の鉄壁な守備陣と、
あらゆる好条件にも恵まれNL史上初となるノーヒットノーランを達成!
痛烈に相手チームの三連覇を阻むと、次なるステージへ向けての進出が決定した。

『今日は今シーズン最高の戦い方ができたのが大きい。まだまだ“逆襲の獅子”の強さを見せていきたい』
指揮官がシーズン中、再三見せてきた“秘策”はもう必要ないのか。が、しかし、ここぞの場面で、温めてきた“あの秘策”が飛び出すかも知れない。
その時が、NL2010年の集大成を意味する時であろう。

■平成22年9月26日/雁ノ巣5番/開始13時/
○マシーナリ 7-1 N.ライオンズ●

MN :2 0 4 1 0 0: 7
NL :1 0 0 0 0 0: 1

敗・松山6勝5敗
松山・久保・安井—府後

本・安井2号(ソロ)

【経過】
今季初となる練習試合。2週間後に迫るリーグプレーオフ準決勝に向け各選手、調整に余念はないはずだ。
先発マウンドにはエース・松山が上がった。前回のリーグ戦最終登板では、テンポ良く打たせて取る投球術が冴え渡ったばかり。
この日も立ち上がりから果敢に攻めの投球を試みるも、四球がらみで早くも2点を失ってしまう。

その裏、2死無走者から、“スピード違反で捕まっても気分はMAXファクター”3番・安井が、2ストライクと追い込まれながらも
ドンピシャのタイミングでフルスイング。打球は鮮やかな弧を描き左翼スタンドに突き刺さる第2号ホームランで、すかさず1点を返した。

調整登板の松山は、エースらしい堂々たる投球で2回を三者凡退に抑えた為、予定になかった3イニング目に突入。
しかし突如制球を乱し、あれよあれよという間に4失点。試合の流れをなかなか掴めない。
4回からは、NL勝利の方程式を担うセットアッパー・久保がマウンドへ。調整とはいえ、球威・制球ともに苦しい内容で
1点を失ってしまったものの、続く5回を無失点に抑え打線の援護を待つ。

こうなると自慢の打線に期待したいところだったが、安井の一発以降なかなかあと一本が出ない苦しい展開。
6回からは“快速右腕”安井が登板。切れ味鋭い変化球も交え、プレーオフへ向け“隠し玉”の登場を予感させるピッチングを披露した。
しかし打線の方は各自、最終チェックの段階に入った為か繋がりを欠いたままゲームセット。
試合には敗れたものの、公式戦ではなかなか試しづらい点も確認。
首脳陣も確かなる手応えを掴み、いよいよリーグ戦プレーオフへ突入する。

■平成22年9月12日/駕与丁公園/開始10時/
○N.ライオンズ 13-8 丸喜レンジャース●

MR :1 0 0 6 1 0: 8
NL :1 7 0 2 3 X: 13

勝・松山6勝4敗
松山—府後

打・安井1

【経過】この日のリーグ最終戦は今季最大の試練で迎える事となった。
最強のトップバッター・久保、主砲・美澤&SUNの強力クリーンアップの主軸3選手を欠く非常事態。
このピンチを聞きつけ、いの一番に参戦の名乗りを挙げたのは“NL伝説の天才スラッガー”徳地。一身上の都合によりチームを離れて
久しいものの、まさに“心はひとつ”。
首脳陣はすぐさま徳地の1軍登録即スタメン2番レフトでの起用を決めた。
打線も大幅な組み替えを余儀なくされたものの、どのピースに当てはめても充分に機能する、それがNL No.Limit打線の真骨頂だ!!

しかしながら、そんな重厚な打線とは裏腹に、人数ギリギリの老獪な守備陣には不安要素が満載。
猛暑を避けてこれまでベンチ内で“日陰の生活”を続けてきた岸本と吉武のベテラン勢が、需要に応じて颯爽と守備に就いた。
が、いきなり初回、相手先頭打者の打球は打ち取ったファースト・吉武への飛球。『オ〜ラ〜イ』と軽快に落下地点に動いたはずが、
まさかまさか、目測を誤りボールは3メートル後方に落下……。茫然と落下地点を見つめ、
『前回の守備でイレギュラーした送球を目に受けた影響…のはず…多分』とだけ言い残したベテランの逆アシストもあり、
先発・松山が早くも1点を失う不穏な立ち上がり。
しかし、そんな不運なエースを打線が援護していく。

その裏、“1番先頭打者”に入った小田が四球を選び出塁すると、すかさず二盗。かつてのヤングな自分を思い出したベテランは、
調子ノリノリで三盗へ……しかし相手捕手の強肩に阻まれ、時の流れに逆らえず無念のタッチアウト……。
ガックリ気落ちしてベンチに戻る小田。流れを切りかねないプレーで意気消沈…

…と思われたものの、2死一塁から“初めて4番に入っても気分はMAXファクター”安井のレフト前タイムリーで一走・松山が長駆ホームイン。
若手中堅層がベテラン勢の尻拭いを果たし同点に追いつくと、2回には打線爆発の大猛攻を見せる。
“恐怖の下位打線トリオ”府後、MG深町の連打と安達の四球で1死満塁の好機を作りトップへと繋ぐ。
小田の押し出し四球で勝ち越しに成功すると、続く徳地がブランクをものともしない痛烈なライト前タイムリー。
さらに松山が俊足を生かしたタイムリー内野安打、吉武、岸本の押し出し四球で、この回7得点。

マウンド上の松山は、8-1と大量リードにも気を緩めず、この日はクレバーな打たせて取る投球に終始。
久々の遊撃守備に就いた岸本の体力を搾り取るかのように動かしまくり、凡打の山を築いていく。
しかし、である。この日の守備陣の老獪さを忘れてはならない。

4回にはとうとう守備陣乱れまくりにより、一気に6点を返され気がつけばまさかの1点差。
再び尻に火が点いた打線はその裏、『4番は気持ちいいっス』とばかりに安井が今度は右中間を突破するタイムリー二塁打で貴重な追加点。
さらに、吉武の進塁打と岸本の内野ゴロの間にもう1点。ベテランの“泥くせぇ〜”貪欲さで得点差を広げたものの、まだ3点差。
何が起きるかわからない。
案の定、5回にまたもや守備の乱れで1点を失い2点差へ逆戻りだ。
何とかダメを押したいところで松山が、『自分で決めます!』とばかりにライト線タイムリー二塁打を放ち11-8。
そしてNL通算100安打に王手を掛けながらも、2試合沈黙が続いていた吉武。周囲は腫れ物に触るかのように無関心を装うが、
NL広報パパラッチ・マグの取材攻勢の前にはさすがに焦りを隠せない中、2死二、三塁から捉えた打球は右中間を破る2点タイムリー二塁打。
遂に大記録を達成すると共に、リードを5点差に広げダメを押した。

松山は荒れた展開にも独特のマイペースさを崩さず、最終回をキッチリ0点に抑え完投でゲームセット。
戦前、大幅な戦力ダウンによる大苦戦が予想された一戦を白星で飾り、リーグ最終戦を終了。
次回、調整ゲームを挟みいよいよ、プレーオフの荒波に突入する。

■平成22年9月5日/雁の巣軟式1/開始11時/
○福岡ブルドッグス 4×-3 N.ライオンズ●

NL :2 0 0 0 1 : 3
B :0 1 0 0 3x:4

敗・松山5勝4敗
松山—美澤

【経過】
リーグ戦も残り2試合。悔いのない戦いを見せ、プレーオフ進出を目指していきたい。
NLとしては今後の戦いを視野に入れ、内容を残したい一戦だ。


この日切り込み隊長久保の体調不良による欠場によりオーダーを入れ替え、普段中軸に構える二人を頭に並べる。
ゲームは初回、超攻撃型ツートップに入った安井、松山が四球を選び、クリーンアップへと繋ぐ。
さらに3番SUNまでも四球を選び切り、無死満塁で4番・美澤という絶好の場面を演出。
美澤はキッチリとセンターフライ。三塁走者は悠々とタッチアップでホームイン……のはずが、あれ???まさかの離塁ミスにより必死の帰塁へ。
確実に1点の場面を逃し、不穏な空気が漂うが、そうはさせじと続く小田が三塁前へボテボテのゴロ。
狙ったかのような死んだ打球に焦った三塁手の失策を誘い2点を先制した。

久々の先発マウンドを踏んだのはエース松山。2回に1点を失うも、度重なる大量失点のピンチを凌いでいき、エースの貫禄を見せる。
すると最終回となった5回に待望の追加点だ。
これまで長い沈黙を続けた責任を感じ、激やせ報道が伝えられた美澤が、4番の仕事を果たすライト前タイムリー。
主砲の一撃で得点差を広げたものの、最終回、松山が自らの勝負に敗れ四球連発。3点を奪われ逆転サヨナラ負けを喫した。
指揮官は『あの場面で持ちこたえられないようでは、まだまだ』とエースに懸ける期待の大きさから、厳しい言葉を投げ掛けた。

レギュラーシーズンも残り1戦となり、悔いなく出し切りたい最終戦。だが。
最後の最後で今季NL最大の試練が訪れる。

■平成22年8月22日/名島運動公園/開始15時/
○N.ライオンズ 6-5 Peeps●

P :2 0 1 2 0 0 :5
NL :2 4 0 0 0 x :6

勝・松山5勝3敗
安井・松山—翔平
打・久保1

【経過】
リーグ戦も残り3試合となり、プレーオフ進出へ向けて弾みをつけたいこの日の一戦。
いつものように相手チームのみならず、暑さとの戦いにも勝利して行きたい。
そんな試合前からベンチ裏は非常に慌ただしい。なぜなら、2選手がNL通算100安打達成を目前に控えた状態。多くのマスコミも詰めかけ、
舞台裏では記録達成に備えたセレモニー開催の準備が着々と進められていく。

また、夏場の苦しい台所事情と、不測の事態に備えてベンチでは首脳陣の職権濫用により岸本、吉武が“ベンチ温存DH”の特権を獲得。
もう1名は当然、年功序列の小田と思われたが、負傷箇所の回復が遅れたSUNを選出。
決して小田を“かわいがり”する訳ではなく、小田が采配批判した為に“暴行”を加えた訳でもなく、ただ単に指揮官が“ドS”な訳でも当然…ない。

そんなゲームは初回から激しく動いていく。
この日の先発マウンドにはエース松山の姿はない。指揮官・岸本が送り出したのは“期待のX-ファクター”安井。
NL初登板初先発の緊張からか立ち上がり2点を失ったものの、自慢のストレートとブレーキの利いた変化球を武器に全身全霊で
堂々たるピッチングを披露。
そんな安井の力投に応えたい打線はその裏、先頭の久保が当然のように出塁し、相手エラーの間に二塁へ。いきなり得点圏のチャンスを掴むと
1死後、負傷をものともしない“インテリジェンス・モンスター”SUNがセンター前に弾き返しチャンス拡大。
美澤の打球は顔と体型で威嚇しショートのエラーを誘うと、さらに自らを楽にすべく安井がセンターの“頭部”を強襲するタイムリー!
怒濤の攻撃は止まらず、続く小田が前進守備の三遊間を破る連続タイムリーで早くも同点とした。
ここで迎えるはNL通算99安打…100安打の偉業に王手をかける吉武。
これ以上ないお膳立ての中で打席に入ると、一挙手一投足に注目が集まる中で放った打球はセンター正面へのフライに終わった。
『(カメラの)フラッシュが眩しくて見えなかったね…』との捨てゼリフを残して、寂しくベンチへと下がって行った。

2回裏、肩の故障により急造ながらもファーストの守備がしっくりいき過ぎの府後がレフト前安打で先頭出塁を果たすと、
続く松山が放った打球は右翼スタンドへ向け一直線。
『いったか〜』の歓声の中、最後に失速しフェンス直撃のタイムリー……いや、しかし、一塁走者・府後はあくまでマイペースに
ジョギングよろしく悠然と三塁ストップ。『俺の打点が………』的な眼差しを見せる松山を尻目に、『無理しね〜よ』とマイペースを
決めて込む府後。とにかく無死二、三塁でのゲーム再開だ。

だが、府後は“おいしい場面”を虎視眈々と狙っていた。1死後、安達のサードゴロは真っ正面。
ここで府後が自重せずにまさか、まさかの本塁突入へ。5→2と渡り完全なるタッチアウト……
明らかな暴走と思われた次の瞬間、それまでのジョギング走法から一転、捕手のタッチを“グリコポーズ”
いや、ベーリーロールにも似た『八艘跳び』で捕手を跳び越えると、ホームベースの一角をギリギリでタッチする神業を披露。
間一髪セーフで勝ち越しのホームインを果たすと、『勝負手は最後まで取っておくもの』と言わんばかりの「どや顔」でベンチに帰還。

火が点いたら止まらない恐怖の下位打線は、続くラストの翔平が右中間を真っ二つに破る2点タイムリー三塁打。
さらにトップの久保が前進守備のショートを吹っ飛ばす痛烈なタイムリー内野安打で追加点し、この回一挙4得点。
なおも攻撃は続き2死ながら一、二塁、ここも最高のお膳立てを整え、迎える打者はNL通算97安打から2試合ノーヒットが続く4番・美澤。
100安打の大台を前にしてのプレッシャーからか食事も喉を通らず激痩せ。この打席も本来の打撃とは程遠いセンターフライに終わり、
記録達成を次回以降に持ち越した。
こうなると大記録達成への期待がかかる吉武の最終第2打席。3回、2死無走者で打席が回ると、こちらもあえなくショートゴロ。
セレモニーの撤去作業が厳かに執り行われる中、デーゲームにもかかわらず『照明が目に入ったみたい』と言い残し、
寂しくベンチへと下がって行った。

先発・安井が3回に1点を返されると、4回からは逃げ切り態勢のエース松山を投入。
しかし、いきなり2点を返され1点差とされると、続く5回には制球を乱し無死満塁と絶体絶命の大ピンチを迎える。

長引く守備の時間……灼熱の太陽……蘇る悪夢……気になる左翼手・小田の姿……もはや置物ですか?

安定感を欠くエースの不甲斐ない姿に誰もが投手交代を進言したが、指揮官は微動だにせず、
『マツ、お前が責任とれ!!』と檄を飛ばし、エースとの心中を決め込んだ。

ここで松山が本領を発揮して、2者連続サードゴロに斬って取る。最後は渾身の投球で三振を奪い、
最大のピンチを無失点で切り抜けてベンチの期待に応えた。
結局、やれば出来る子の松山は最終回を0に抑え、2試合連続リリーフでの勝ち星を奪い5勝目を挙げた。
厳しい暑さの中で、苦しい1点差ゲームをモノにしたNL。プレーオフに向け、最後のスパートをかける『時は来た!』

■平成22年8月8日/駕与丁公園/開始16時/
○N.ライオンズ 7-5 メイズスクラッピー●

MS :0 0 4 0 0 1 0: 5
NL :0 4 3 0 0 0 X: 7

勝・松山4勝3敗
久保・松山—府後・美澤
打・吉武2

【経過】
猛暑の8月に入っても、NLを襲う“泥沼の氷河期”が解ける事はないのか…。
投打のバランスを崩し、リーグ戦を連敗中で迎えたこの日、指揮官・岸本が先発のマウンドを託したのは、
日頃セットアッパーとしてNL勝利の方程式を担ってきた久保。
エース・松山の負傷か、それとも久保の大抜擢なのか……あらゆる憶測が飛び交う中、久保はいつも以上の熱き投球で立ち上がりを切り抜け、
2回まで無失点と結果を残した。

そんな久保の魂を感じ、ここ数試合湿りに湿っていたNL打線が2回、遂に長い沈黙を破り覚醒した。
先頭の小田が冷静に四球を選び出塁し、突破口を開かんとする盗塁を決めると、
いつものように主将・岸本からの“密命”を受け打席に入った吉武が一塁左を襲う内野安打で続き、抜かりなく二盗を決めた。
ベテラン勢の波状攻撃で無死二、三塁とすると松山が更に四球を選びチャンス拡大。続く打者は昨年相手チームとの対戦で猛打炸裂し、
“伝説のフーガさん”として恐れられた府後。
早くも勝負所と読んだ指揮官は府後を呼び寄せ、企業秘密な囁きで打席に送り出した。
すると府後が放った痛烈な打球は右中間を真っ二つの先制2点タイムリー。チームにとって8イニングスぶりの得点、
しかもタイムリーとなるとおよそ2ヶ月13イニングスぶりとなる待望の“難産”であった。
ようやく沸き上がったベンチの歓声が鳴り止まぬまま、続く“一日一膳マン”MG深町もレフト前への連続2点タイムリー。

4点を奪いようやくベンチに安堵感が広まりつつあった次の瞬間、大きな落とし穴が待っていた。
ベンチに残した“紅一点”が気になり始めたか、マウンド上の久保の制球が突如乱れ始める。
ここ2試合の悪夢再び……“猛暑の中のビッグイニング”を作ってしまい、あっという間に4点を奪われ同点とされてしまった。
特にベテランには厳しい猛暑の中での守備。レフトを守る小田の動きが止まった。スタンディング・ダウンか……
『あれ?息、してる?』
ベンチから心配気な声が上がるが、次の瞬間、小田の動きが確認されると場内の観客も皆、スタンディング・オベーションだ。

そんな中、更に勝ち越し点を奪われ突き放される絶体絶命の危機。今こそベンチから戦況を見守る首脳陣の絶妙なる采配に注目が集まったが、
西日が照りつける一塁側ベンチ内で“ゆでダコ”状態となり、汗ダクのまま廃人同然と化した2人の“壊れた信号機”からは発信の期待ができない。
しかし、久保が気力で後続を絶ち、何とか同点のままで危機を脱した。

するとその裏、是が非でも“ピンチの後にチャンスあり”を実践したいNLは、“廃人から超人”へと華麗なる転身を遂げた先頭の岸本が、
颯爽とベンチを飛び出したものの、打球はサード前へのボテボテのゴロ。ベテランなりの全力疾走で内野安打を勝ち取ると、
再び塁上では“廃人”へと逆戻り。
そんな主将の必死な姿を見て、後のクリーンアップが続かない訳がない!しかし、SUNはドン詰まり、美澤も打ち取られ2死……
嫌な流れに押し戻されそうになりながらも、続く“気分はMAXファクター”好調安井が執念で左中間を破る勝ち越しタイムリー!
こうなればイケイケだ。

塁上に2者を残し、この日DHでサウナと化したベンチ内で一汗流した吉武が放った打球は右翼ポール際への大飛球。あわや『いったか〜!?』
のエンタイトル池ポチャ二塁打で6点目。
続く連続左打線の松山も足で稼いだ内野安打がタイムリーとなり、この回3点を勝ち越した。

4回からは満を持してエース・松山がマウンドに上がる。
久々のリリーフとはいえ、この日は球威・制球とも申し分ない内容で4回1失点。勝ち投手の権利を得て、4勝目を挙げた。
連敗を2で止め、打線の勢いを呼び戻したNL。次回のゲームでは指揮官の仰天起用采配あり、
個人記録として2選手がNL通算100安打の大記録達成を控え、ますます目が離せない展開となってきた。

■平成22年8月1日/柏原公園/開始11時/
○アローズ 10-0 N.ライオンズ●

AR :2 0 0 0 0 8:10
NL :0 0 0 0 0 0: 0

敗・松山3勝3敗
松山・久保・美澤—府後・久保

【経過】
月が変わればツキも変わる……そう信じて臨みたい8月のリーグ戦。
しかし、愚痴ばかりしか出てこない内容に、甘くない現実を痛感させられる事となった。
試合はまたしても“暑さ”との戦いとなる。

初回、相手打線を2人迎えただけで、早くも1点を献上してしまう始末。さらに1点を追加されて初回簡単に2失点。
また炎天下のグラウンドで延々と守備の時間を費やしてしまうのか……前週の悪夢が蘇る。

何とか攻撃でリズムを作りたい打線だったが、相手先発ベテラン投手の老獪なインサイドワークに翻弄され、いとも簡単に打ち取られてしまう。
3回には無死満塁、致命的な大量点を奪われる絶体絶命の大ピンチを迎えた。
ところが、ここで先発のエース・松山が後続を丁寧に抑え無失点に凌ぎ、ゲームの流れを呼び戻した……かに思われたものの、
肝心の打線が全く機能しない展開。

5回にはとうとう……ゲームが壊れてしまった。
この回も3回同様、無死満塁の大ピンチ。『ここも凌いで何とか反撃に転じたい』という淡い希望も虚しく、
繰り出す投手陣の“炎上”で長〜いビッグイニングを作られてしまう。
コースを狙う制球重視のNL投手陣にとっては、低めの球がことごとくボール判定と厳しい判定が続く不運も重なりリズムに乗りきれず、
ストライクを取りにいった球を痛打される悪循環。
あまりの長い守備時間に、捕手・府後が熱中症寸前の状態でリタイヤ。
結局、僅か1安打。出した走者も3人のみという、真夏なのにお寒いゲーム内容。
切り替えて、暑い真夏をみんなで乗り切りたい。

■平成22年7月25日/大井中央公園/開始9時/
○チームH 7-3 N.ライオンズ●

NL :0 0 0 1 1 0 1: 3
TH :0 4 1 2 0 0 X: 7

敗・松山3勝2敗
松山・久保・美澤—府後

本・安井1号(ソロ)
  松山1号(ソロ=ランニング)

【経過】
記録的豪雨に見舞われた梅雨時に2試合を流し、1ヶ月以上も間隔を空け再開した久々のリーグ戦。
そして、待ちに待ちわびたNL関係者、ファンに対しての、サービス精神にも余念がない。
まずは夏休み企画として、選手の子供たちをベンチ入りさせる、“NLキッズデーを開催。
日頃、日曜日が選手の趣味三昧と化した状態である事を懸念し、家庭サービスへと強引に結び付けるNLらしいプランを打ち出せば、主将・岸本、
吉武、小田、安達がそれぞれ趣旨に賛同した。
さらに試合後のセレモニーとして、NLきっての“ロン(毛)派〜”安達の『テーマなき断髪式』も控えているとあって、
女性ファン絶叫の悲鳴と共に、数多くのファンを動員する事となった。(NLブログ・ビッグマックマグのぽてんヒット参照)

試合は開始前から想像以上の過酷さを極めた。午前9時開始のゲームにして、ただグラウンドに立つだけでも厳しい猛暑にさらされる。
全身を襲うダルさからか初回、2死一、二塁から先制の絶好機を逃すと、2回もあっさりと三者凡退。
逆に灼熱の太陽を浴び続ける守備の時間が長くなってしまう。

先発・松山は広いストライクゾーンを目一杯使う投球で打者を翻弄したものの、暑さにイカれた守備陣のマズいプレー連発に
足を引っ張られてしまう。
2〜4回までの間に自責0ながら大量7失点……取り返しのつかない展開に誰もが気力を失いかける中、ひとり不死身の男がいた。
『オラ、お前ら声出して行け〜!!』
この日DHスタートで、日陰のベンチで片手にうちわで居座る主将・岸本の檄だった……。

依然ノーヒットと沈黙を続ける打線が目を覚ましたのは4回、主砲の一発が反撃のノロシとなる。
簡単に2死となりながらも五番“NL Xファクター”安井がまさに‘未知の要因’ドンピシャのタイミングでフルスイング。
打球はライナー気味に放物線を描きながら、文句ないフェンスオーバーとなるNL第1号ホームラン。隣接する公園に突き刺さり、
戯れる子供たちもびっくり仰天の一撃を放った。
流れを呼び込む一発の後、吉武の打球がサードの後方をフラフラと襲いポトリと落ちるベテランらしい技ありの一打で続く。

暑さに神経が麻痺していたNL打線が遂に覚醒すると、5回にはフルスイングした松山の打球がセンターへ一直線。
外野手の頭上を越えボールが転々とする間に、これまたNL第1号ホームランをランニングで決め、俄然反撃ムードが高まる。

指揮官・岸本は続投志願する“自責0悲運のエース”松山をマウンドから降ろすと、5回にはセットアッパー・久保、6回はクローザー・美澤を
惜しげもなく投入し、勝利への執念を見せる。
すると土壇場の最終回、遂にその執念が流れを呼び込んで、まさかまさかの結末が、キタァ〜!!!

『当たってでも出塁しろ〜!』と、ベンチから半ば脅迫まがいの檄を受けて打席に入った先頭のMG深町が、必死にバットに叩きつけて激走。
まさに執念のセカンド内野安打で出塁を果たした。
続く松山が冷静に四球を選ぶと、ラストの“断髪魔”安達がまさに捨て身の死球を勝ち取り、無死満塁と絶好の場面を演出してトップへと繋いだ。
まさに、繋がり出したら止まらないNL打線の真骨頂だ。
久保の三塁ゴロの間に1点を返し、いよいよ“逆襲の獅子”の本領発揮か……と思わせたものの、後続が凡退しゲームセット。
試合後、選手駐車場にて安達の断髪式が、まるで敗者髪切りマッチのように、厳かに執り行われた事は言うまでもない。
次戦も相手チームとの戦いの前に、“暑さ”という己との戦いを強いられる事になる。

■平成22年6月13日/駕与丁公園/開始16時/
○N.ライオンズ 8-2 マスタング●

NL :4 2 1 0 0 1: 8
MT :0 0 2 0 0 0: 2

勝・松山3勝1敗
松山、久保、美澤—翔平
打・吉武1

【経過】
リーグ戦も後半戦を迎えて選手個々、チーム状態ともに最高潮。その間にマイナーチェンジを施したNL新ユニホーム完成お披露目会も開催され、
次のゲームから一部選手の着用が発表された。
しかし、日程上の編成と雨天中止が重なり1ヵ月以上もゲーム間隔が空く不運に見舞われてしまう。
世界最大手メーカーN社との共同開発で実現した最新鋭の機能性充実素材と、『野球は経済力』とばかりに超豪華な刺繍製法に全精力を注いだ
新ユニホームが、なかなか陽の目を見る事ができない日々が続く。
ところがこの日雨の予報を覆し、奇跡的な晴天に恵まれて実現に漕ぎ着けたリーグ戦で、遂に新ユニホームが衝撃のデビューを果たした。

プレーボールで打席にはいつものように不動の1番“赤い爆弾小僧”久保。気合いの丸刈りに決意を込めた打席で四球を選ぶと、
相手強肩捕手との勝負を制して二盗を決める。
続く“NL随一の策士”岸本が自我を捨てチームプレーに徹した内野ゴロで走者を三塁に進めると、ここで恐怖の最強クリーンアップが登場だ。
迎えるは“眠れぬ森のカリビアン”SUN。何と試合開始7時間前に球場入りというベンチの度肝を抜く荒業を見せると、
この打席でも『調整は万全』とばかりに四球を選び盗塁。
1死二、三塁で四番“闘う不動明王”美澤へと繋ぐ最高のお膳立て。『先制点はカッコ良く決めてくれ』というベンチの思惑を乗せた打球は、
あまりにも対照的だが実に深みのある三塁ゴロエラー……二者が還り先制点を叩き出すと、
続く“NLせんとくん”安井が『新ユニホームの背番号6に恥じない働きをします!』の宣言通り、キレイにセンター前に弾き返して
チャンスを切らさない。繋がりだしたら止まらない打線は、ここから強打のベテランコンビが登場する層の厚さを見せる。

幼稚園児の長男をベンチ入りさせた小田は、いきなり三遊間を破るレフト前ヒットでパパの威厳をアピールしチャンス拡大。
指揮官・岸本から早速ネクストの吉武へ絶妙な“企業秘密”の囁きが入った。
今や球界を震撼させるこのパフォーマンスで球場を埋め尽くす大観衆を沸かせる。
この“囁き”を受け打席に入った吉武は、試合前に『小学生わんぱく相撲大会』で長男の快進撃を目の当たりにして受けたパワーを発揮し、
センターオーバーのタイムリー二塁打。
“親父ーズ”の活躍で3点目を奪ったものの、このまま終わらない打線はさらに続く“NL必殺仕分人”府後までも痛烈なレフト前タイムリー。
炎の4連打で初回に4点を奪うと、2回にも攻撃の手綱は緩めない。
2死二、三塁でトップに還り久保が鮮やかに三遊間を破るレフト前タイムリーを放つと、相手エラーも絡み2点を追加する。
3回にも小田のショートゴロの間に1点、6回にはダメ押しとばかりに安井の右
中間タイムリーで計8得点。長いブランクをものともしない、NL重量打線が本領発揮だ。

だが圧巻はNLが誇る強力投手陣による豪華リレーだ。
先発の左腕エース松山が4イニングを投げ2失点と安定した内容でゲームを作ると、今度は右の強力救援陣の登板だ。
今季初登板のセットアッパー久保が力のある直球とキレ鋭いの変化球で1回を無失点で繋ぎ、得点差が開いたものの最後は、
守護神・美澤が志願登板し安定した投球で最後を締めた。

そんな強力な投手陣をバックで支える守備陣も忘れてはならない。
セカンドMG深町は、一見“ヤバイ”と思わせる程に体をシェイプアップし、軽快な動きで痛烈な当たりを一度グラブに当て、
弾き落としてから仕留める新技“ハエ叩き”を披露し、守備とは何たるかをアピール。

また、得点圏の場面で相手打者の打球は二遊間を抜けタイムリーか、という場面。
しかしセンターSUNの沖縄まで届かんばかりの通称:石垣島レーザービームで走者を三塁に釘付けにさせるファインプレーも見逃せない。

さらに正捕手・府後の右肩故障によりスタメン捕手で起用され、巧みなインサイドワークを駆使して3投手をリードした翔平。
もはやNLの準構成員という枠を超え、どっぷり主力選手として浸かり切ったその笑顔が眩しいばかりだ。

記念すべき新ユニホームでの初陣を白星で飾った“逆襲の獅子”。今後の戦いからも、ますます目が離せない。

■平成22年5月9日/駕与丁公園/開始8時/
○N.ライオンズ 6-5 グラディエーターズ●

GA :2 2 1 0 0 0: 5
NL :0 2 3 0 1 X: 6

勝・美澤2勝0敗

打・松山1

【経過】4月を無傷(2勝1分け)で終えたNLは、勢いそのままに5月戦線に突入。
しかし、この日の相手は'08、'09パブリックリーグ連覇を果たした強豪チーム。勢いだけでその牙城を崩す事は困難。今こそ初心に戻って、
“全員野球”でその壁を突破したいところ。
チーム主力組は前週の休養日を志願返上し、実戦による強化合宿を組む気合いの入り様。
NLベンチを指揮する岸本は『ベテランも若手もいい緊張感で取り組んでくれた。最高の状態』と手応えを感じ、いざ決戦を迎えた。

常日頃、指揮官・岸本はアンビリーバボーな“企業秘密”な秘策を打ち出すが、この日も相手投手攻略の指示を徹底し、ベンチを動かして行く。
これがまた、功を奏して行くのだから、相手チームにとってこれほど厄介な事はないだろう。

さて、ゲームは当然、NL不動のエース・松山の先発と思われた。
しかし、まっさらなマウンドに映る重厚なシルエットは、松山のそれではない……そう、そこには“大魔人”美澤が仁王立ちだ!!
NLの切り札登場にスタンドが静寂からどよめき、そして大歓声へと変わる。
思い起こせば相手チームとの初対決、'08年4月20日、舞鶴公園で自身初となる屈辱のサヨナラ負けを喫した美澤。
以来、2年間リベンジの機会を待った美澤の気持ちを汲んで、先発マウンドへと送り出した指揮官・岸本の気持ちも熱い!!
が、しかし、序盤からまさかの展開には一同、度肝を抜かれる事となる。

相手の緻密な攻撃の前に美澤の闘志も空回りし、初回2点、2回にも2点…早くも4点を失いリードを広げられしまう。
一方的な先制パンチを浴び、ベンチも意気消沈…するはずもなく、猛然と反撃開始の口火を切った。
2回裏、美澤の痛烈なライト前安打と、巨漢に違わぬ俊足を生かした盗塁で得点圏へ進むと、小田も渋いセンター前安打で続く。
1死二、三塁…ここで迎えるは中年の星“リアル・ゼブラーマン”吉武。自称・脊椎分離症の大怪我から見事にカムバックし、
巧みなバットコントロールで白黒つけた打球はレフト線を襲う2点タイムリー二塁打。
ベテランらしいナイスショットな当たりで2点差に迫り、傾いた流れを呼び戻した。

ところが3回、美澤の調子が戻らぬまま1点を追加され、さらに走者を埋めて大量失点を覚悟した場面。
ここで蘇った美澤は後続を断ち流れを切ると、遂にNL打線が猛反撃に転じた。
3回裏、好調下位打線を担うMG深町が開幕から連続安打となる先頭ライト前安打で出塁。
1死からベテラン岸本が老骨砕け散る勢いで死球を呼び込み、身体を張ってチャンス拡大。
松山は執念でセンター前に弾き返して1死満塁。最大のお膳立てが整ったところで迎えるは、NL最強クリーンアップだ。
ここで打席には三番“リアル・パイレーツ・オブ・カリビアン”SUN。
『沖縄の神谷のアニキに届け』とばかりに粘りに粘った末、執念のライト前タイムリー。
2点差に迫ると四番“リアル・ジャイアン”美澤。『レフトスタンドへ届け』
と言わんばかりの豪快なスイングから生まれた打球はボテボテのショートゴロに。
三走・岸本が執念でホームに還り、キッチリと四番の仕事を果たすと、今度はNL機動力野球が全開。
一走・美澤が二盗を決める間に、“リアル・暴走機関車”三走・松山がホームを陥れ遂に同点に追いついた。

こうなるとマウンドの美澤がイケイケだ。3回までとは別人の内容で相手打線を封じ込めると、5回裏の勝ち越し点へと導いていく。
この回先頭の準構成員翔平が意表を突くセーフティバントで内野安打を決めると、
主将・岸本の打席で二盗とワイルドピッチで勝ち越しのチャンス。力んで打ち上げ、美味しい場面を松山に託す。
二塁で先ほど同点の好走塁を決めたばかり、ノリノリの状態で打席に入る松山。
『今日は投げない分、打って走って貢献します』と高らかに宣言した当たりはセンターへ高々と上がった決勝の犠牲フライ。
三走・翔平がホームに還り、遂に、遂に最大4点差をひっくり返しての大逆転勝利!!

完投した美澤は内容に不満を抱えながらも、見事に借りを返す勝利投手に輝いた。
これで大一番を制し、リーグ戦は1分けを挟み3連勝。
もはや勢いだけでは済まされないNLの着実な王道野球復活に、主将・岸本も手応えを感じつつ前半戦を終了。
ブロック2位ターンで次戦より交流戦に突入する。

■平成22年4月25日/雁の巣軟式1番/開始15時/
○N.ライオンズ 10-1 福岡NR●

NL :1 0 5 0 0 1 3:10
NR :0 0 0 0 0 1 0: 1

勝・松山2勝1敗
松山—美澤=府後
打・美澤1

【経過】劇的な逆転サヨナラ勝利から1週間……決勝打を放った主将・岸本の顔がなぜか浮かない。
それもそのはず。NLは史上初の快挙に慣れておらず、殊勲打を決めた岸本の元に誰も集まって来なかったばかりか、初々しくベンチ前で
各自勝手な喜びに浸るという有り様。
喜び一転、“怒りの獣神”と化した主将がこの日も大暴れする事になる。

チームは歓喜の余韻に浸りつつも、次なるステージへ向けて慢心さは微塵も感じさせていない。
この日はNLの最強下位打線を担うMG深町、安達が無念の欠場。しかし前週、老骨にムチ打てず欠場し、歓喜の輪に入りそびれた小田が
“焦りの獣神”として完全復活。
さらに前週、自称・椎間板ヘルニアの重症をおしてDH出場し、逆転サヨナラのお膳立てを作る二塁打を放った“痛みの獣神”吉武は
『俺の守備はダイブしてナンボなんで。選手生命を絶たれてもいっちゃうよ』と本職の一塁守備での志願出場。
続々と主力が戦列復帰する状況を見て司令塔・岸本は、遂に念願の“2010年完成型オーダー”を構築した。

早速、試合は初回から動き出した。
1回表に1死から岸本が前週の興奮覚めやらぬまま、レフトオーバー二塁打を放ち打線の導火線に着火。
1死二、三塁から美澤の打席で暴投。この日も“名前と顔と体型”で貫禄の1点を奪い先制点を叩き出す。

3回には圧巻の猛打爆発だ。
先頭の“いつまでも覚めぬ興奮”岸本が左中間を破る二塁打で出塁し、またもやチャッカマンと化すと、続くSUN、美澤、安井、小田、吉武と
右に左に打ちまくり6者連続出塁。2死からトップに還り“赤い稲妻”久保が駄目押しイナズマタイムリーを放ちこの回、5安打集中5点を追加。
繋がり出したらやめられない止まらない、NL・No Limit打線がここに完全復活を果たした。

6回には小田が“仕事キッチリ”センター犠牲フライ。
7回には岸本が策士ならではの浜風に乗せた、あわや『いったか〜』の特大レフト越えエンタイトル二塁打で猛打賞の大爆発。
『いい風だ〜』ベンチも称賛の雨あられで3点を追加し、結局13安打10得点。

先発はエース松山が2試合ぶりの登板だ。前回は主将・岸本からの完全休養指令とはいえ、美澤の完投勝利を目の当たりにし
刺激を受けないわけがない。
この日は雁の巣特有の浜風を逆手に取り、打者の手元で微妙に変化する“企業秘密的”ウイニングショットを多投。
捕手・府後との呼吸もバッチリで、相手打線に付け入る隙を与えない。

守備もベストな布陣を敷き、どんな痛烈な当たりもクサい当たりも堅守で投手を援護する。
サードの美澤は、神谷が乗り移ったかのような軽快なフットワークで痛烈な当たりを再三阻止。
強烈な浜風に打球が流されながらも好捕を続けた小田は、“記録に残らなかった痛恨の落球”のトラウマを払拭し、復帰戦を猛打賞で飾った。
“鉄壁の左中間”として新コンビの安井&SUN、“老体の一二塁間”ながら突破困難の吉武&岸本、その岸本の“ショート卒業”により
入った久保も完璧にこなした。
気づいてみれば松山は4回までノーヒット投球を続け、結局6回被安打2、1失点の今季ベストピッチ。
最終回は“守護神”美澤が『これぞ大魔人!』という圧巻の内容!
打者にまともなスイングをさせない投球で簡単に2死にすると、最後の打者も三振に斬って取るパーフェクトリリーフ。
投打に勢いを増したNLは“逆襲の獅子”としての牙を研ぎ澄まし、次なる戦いに挑むのであった。

■平成22年4月18日/山王公園/開始9時/
○N.ライオンズ 3×-2 早良区LOVE●

SL :0 1 0 0 0 1 0 : 2
NL :0 0 0 1 0 0 2×: 3

勝・美澤1勝0敗
美澤=府後
打・岸本1

【経過】厳しい戦いが続くNLにとってこの日、さらに険しい非常事態発生。
NL打線を牽引するベテラン勢に、老体ならではの手痛いアクシデントだ。微熱症状が続く小田は大事を取り欠場。
ベンチ入りメンバーからも外し完全休養させる。
吉武は重度の腰痛の為、打順を下げフルDHとして打撃に専念させる荒療治。
開幕4試合目にしての思わぬリタイアと開幕から3試合連続安打中のMAG深町も欠場と指揮官も苦悶の表情だ。
さらにこの日の相手は今季リーグ戦初参入にして台風の目となり、今だ無敗でブロック首位を突っ走るチームだ。
しかし、どんな逆境に立たされてもタダでは起きないのがNLの指揮官。
巧みに打順を組み替え、“孤高の天才”徳地を今季初昇格即スタメンに起用したばかりか、圧巻は大物新戦力の投入。
このピンチに颯爽と登場した安井内野手が電撃入団。
早速、指揮官は期待の大きさを物語る、五番サードでのスタメン起用だ。
打つ手打つ手、その全てがイヤらしいほどに実を結んでいく…それが他チームを恐怖のドン底に叩き落とす、“岸本マジック”なのだ!

肝心のゲームが始まると、1点を争う厳しい展開に終始した。
久々の先発マウンドに上がったのは“大魔人”美澤。
ここ最近、投手としては一歩下がったスタンスで投手陣をまとめる重要な役割を果たしている。
この日はかつての球威と、“顔と体型”で相手をねじ伏せてきた姿を彷彿とさせるかのような堂々たるピッチングを披露。
『俺がミサワだ!』と言わんばかりの力投を続けた。だが、いかんせん打線がジメッと湿りがちだ。

2回に先制された1点がズシ〜ンと重くのしかかり、3回までノーヒットで無得点。相手先発投手の繰り出す巧みな投球術の前に、
凡打の山を築いてしまう。
ところが4回、とうとうあの男を目覚めさせてしまった。しかも、“岸本マジック”効果で……。

先頭の“赤い斬り込み隊長”久保がチーム初安打となるレフトオーバーの二塁打を放ち、岸本の内野ゴロの間に三塁進塁。
ここでこの日三番に上がった“遅れてきたパイレーツ・オブ・カリビアン”SUNが今季初安打となる右中間突破タイムリー二塁打で同点!
そのままイケイケで勝ち越しを狙いたいところであったが、あと1本がなかなか出ない。
同点に追いついてもらった美澤のピッチングも冴えを見せてゲームは終盤に。6回、ここまで完璧な内容を披露してきた美澤が
思わぬ落とし穴にハマり1点の勝ち越しを許す。
すると相手チームはその裏から、イキの良い剛腕ストッパーをマウンドへ送り逃げ切り態勢へ。

6回、NL自慢の重量打線である美澤、徳地が三振を喫し同点、あるいは逆転の好機を逃すと、いよいよ敗色ムードに……。

このまま何もできずに敗れてしまうのか…

力投する美澤を見殺しにしてしまうのか…

いよいよ運命の最終回。

土俵際に追い込まれた時、遂に“逆境の獅子”が蘇ったのだ!

何としても塁に出たい先頭の“NLきってのイケメン草食系”府後が執念で叩きつけた打球は、不規則なバウンドとなり三塁内野安打に。
待望の同点の走者を出し、迎える打者は吉武。自称・腰椎&脊椎損傷で歩行さえままならず、連続試合出場記録更新の為だけに
ヨボヨボと打席へ。
それまでの鰯の腐り切ったかのような眼差しから一転、ベテランならではの勝負師に変身すると、相手投手の速球に差し込まれる事なく
弾き返した打球はライトの頭上をはるかに越え、フェンスまで到達する二塁打でチャンス拡大。
ベテランを下位に据え、勝負どころを待った指揮官・岸本の目論みが土壇場で的中した。

こうなると一気呵成だ。
“アダッチ・サイクロン”ラストバッターの安達が執念で四球を選び無死満塁とすると、トップに還り久保が冷静に見極め、同点の押し出し四球!
後は…NL創設以来初のサヨナラ勝ちに向け、最高のお膳立てが整った。

このおいしい場面で打席が回ってきたのはNLを創った張本人、主将・岸本!
恐ろしいほどにゲームの流れを演出する熱い男がフルカウントから放った打球は、三遊間を破りレフト前に達するサヨナラタイムリー!!!
三走・吉武がホームインするとNLナインが一斉にベンチを飛び出し歓喜の輪が!『きもてぃ〜〜〜!!』
逆転サヨナラ勝利でリーグ戦を2勝1敗1分としたNL。
やはりこのチームは侮れない…ここからまた、“逆襲の獅子”が始まる。

■平成22年4月11日/駕与丁公園/開始10時/
△N.ライオンズ 3-3 ダービッツ△

D :0 0 3 0 0: 3
NL :0 1 0 0 2: 3


【経過】リーグ開幕から2試合を消化して1勝1敗…確実に“貯金”して波に乗りたい第3戦を迎えた。
試合前には嬉しいニュースも舞い込んで来た。
チームを離れ、故郷・沖縄で調整を積んでいた“NLの若き主砲”大濱俊三(今季登録名:SUN)が凱旋帰国。
真っ黒に日焼けした精悍な顔つきは、調整が順調に進んだ為か、またはロングバケーションを満喫した為か…。
とにかく、“石垣島からの贈り物”を迎え、チームは開幕3戦目のリ・スタートを切った。

しかしながら、昨年までのリーグ屈指の固定打線には程遠い。
指揮官・岸本の緻密に裏打ちされたデータ&勘ピューターにより、スタメン発表時のサプライズ感で球場全体を沸かす
ファンサービスにも余念がない。
この日は2番に吉武が入り、3番には岸本。両ベテランを活かした初の組み合わせで、中軸以降にも厚味を出したラインナップだ。

初回、2死から岸本が出塁し盗塁を決め、得点圏に走者を置き四番・美澤に繋いだ。“チーム打撃の王様”美澤が謙虚に四球を選び、
迎えるは今季初打席のSUN。しかしここは気負い過ぎての三振に終わり、先制には到らず。

2回はディフェンスで先発・松山を盛り立てる。
相手先頭打者が一、二塁間を抜けようかという鋭い当たりを放つと、『スタンディングじゃ何気ないプレーになるんで、
大袈裟に見せる為に飛び込んで……いや、どんな形であれエースを盛り立てるために』いうダイビングキャッチで好捕。
私欲を捨てたかのような優等生発言でエースを助けると、続けざまに打球は難しいバウンドでショートへ。
これを難なく捌いてアウトにした岸本も『年末の賞レース(ゴールデングラブ)を意識……いや、松山を助ける事だけを考えて慎重に処理した』
酸いも甘いも熟知した言動を見せるベテラン勢の守備で流れを引き寄せるとその裏、
これまたベテラン・小田が衰え知らずの俊足を生かした内野安打で出塁すると、盗塁まで決めるいつもの“セットメニュー”。
この好機に1死から打席に入るのは“ブログのメジャーリーガー”MG深町。開幕から好調を維持し、“下位打線・影の四番”と恐れられる存在だ。
いつものようにダイナミックな身体からコンパクトに放たれた打球は、フラフラとライト前に落ちる先制タイムリーとなった!
だが喜びも束の間、ゲーム中盤以降はまさに防戦一方に。

3回に怒濤の猛攻撃を浴び3点を失い逆転を許すと、4回にはさらに無死満塁と突き放される絶体絶命の大ピンチ。
ここで踏ん張ったのはエース松山と、この日捕手に入り身体を張ってボールを止め、懸命にリードした美澤。
渾身の投球でこの大ピンチを無失点に切り抜けると、さすがに勝利の女神がNLに微笑みかけて…キタ〜!!
その裏、2死からトップの“赤い情念”久保が出塁し、相手エラーの間に二塁へ。このギリギリの好機に静かなる闘志を燃やす吉武が、
追い込まれながらも痛烈なライナーで逆方向へ!サード右を破る追撃のレフト前タイムリー……になるはずが、
打球速度の速さが仇となり、俊足の二走・久保が本塁手前でまさかのタッチアウト……。
最後の…最後のチャンス、ここに潰えた……かに思われたものの、ここであきらめる訳にはいかないNLは土壇場の5回、
1死から放った美澤の火の出るようなセンター前安打を大号令に、反撃のノロシを揚げた。
だが期待のSUNはこれ以上ないほどの厳しいコースに見逃し三振を喫し2死……。もうダメか……薄れゆく意識の中、
“敗北”の2文字がうっすら浮かんでは消える。しかし、この土壇場で打席に迎えた男が良かった!
チームNo.1のミート力を誇る“人間発電所”小田が放った打球が、ミートを外しボテボテのセカンドゴロに。
こうなれば俊足の小田に一日の長だ。素早く一塁を駆け抜けるタイムリー内野安打で1点差に迫ると、『何とかしてくれ〜』という
ベンチの鋭い視線を浴び、緊張のプレッシャーの中、“マッチョドラゴン”松山の打球は高いバウンドでファーストの頭上を越えるタイムリー
で遂に、遂に同点!!

後はこの状態を保ちつつ、裏の最後の攻撃でNL史上初のサヨナラ勝ちを狙うのみだあ!!!
……と、気合いを入れたのも束の間、クライマックスはとんでもない方向へと転んで行く。

最終6回、満塁のピンチに陥りながらも2死に漕ぎ着け、あと1人。打球はレフト“名手”小田の方向へ…追いついた、大丈夫だ、
捕球した…あれ…??まさかの落球だ…………。
勝ち越しを許した………。
『完全捕球後の落球』と思われたが審判のジャッジは『落球』。

遠のく意識……微かな望みをも断ち切られたと思った次の瞬間、今度は別の欲望が吹き出してくる。
『あれ…?相手の攻撃時間が長すぎるぞ…』
さらに、相手側の“真綿で首を締める”かのような攻撃が続いていた。
リーグ規定によれば、勝ち越してもそのイニングを終えない限り、前のイニングまでのスコアが反映される。
“救助船”が来たかのような微かな光が射し込んだものの、遅延行為など一切ない必死の攻防が続く。
相手側も全身全霊で攻め続け、『手っ取り早く終わらそう』という私欲まる出しの姿勢など一切ない。
そこには、最後の力を振り絞り、純粋に己の力と力をぶつけ合う、『これぞパブリック魂!』と呼べる美しい光景が展開されていた。
しかし、「リーグ規定」を熟知している“ショートとファースト”は悪い顔をしていた事は言うまでもない。
ここで審判が遂に『タイムアップ』を宣告。

リーグ規定により、NLとしては薄氷のドローに持ち込んだ形となった。
幾度かリーグ規定の壁に泣いたNLであったが、今回はそれに救われた格好となった。
だが、もうそんな結果などどうでもいいではないか。
激闘を終えた両チームが健闘を称え合い、今度はプレーオフの大舞台での再戦を誓い合って、球場を後にした。

もう一度言おう。
結果など、どうでもいいではないか。
そう思いつつも、足取り軽く引き揚げるNLナインの姿を確認したのは、絶対に気のせいに違いない。

きっと、気のせいだ。

…多分。

■平成22年3月14日/駕与丁公園/開始14時/
○長尾軍団 10-2 N.ライオンズ●

NL :2 0 0 0 0 0 0: 2
NG :0 4 1 1 0 4 X:10

敗・松山 1勝1敗
松山—美澤=府後

【経過】今季開幕戦を僅差で制し、好発進を見せたNL。
しかし、抱えている問題は山積みだ。不動の3番・神谷がチームを去り、“長髪プリンス”と“孤高の天才”の主力クラスを欠く非常事態宣言。
昨年までの不動のオーダーが組めない状態に、司令塔“NLの正太郎君”岸本はデータ重視の打線構築を目論む。
何とか試合に臨めるだけの布陣を整えてリーグ戦を戦い抜きたいところだ。が、しかし、そんな思惑を易々と通すはずがないのが今日の相手……
毎年のように死闘を繰り広げ、“名勝負製造機”と呼ばれる長尾軍団を前に、ゲームは厳しい展開を強いられる事となった。

先攻のNLは先手必勝で勢いに乗りたい。そんな祈りにも似た願望が早くも結実。
先頭の“NLレッドブル軍団斬り込み隊長”久保が相手サードの失策で出塁を果たし盗塁。1人で得点圏まで歩を進めると、
続く“NLレジェンド軍団主将”岸本が痛烈に三遊間を破るレフト前安打でチャンス拡大。
1死から打席には自他共に認める“過去最大最重量級の絶好調男”美澤!!噂に違わず鋭く振り抜いた打球はセンターへの大きな放物線……
『いったか〜』ほどの伸びはなくても悠々と犠牲フライとなり、待望の先制点を叩き出した。
四番が最低限の仕事を果たすと、塁上に走者を置いて迎えるは“NL青義軍リーダー”吉武。
偶然過ぎるほどに『計算され尽くした』打球は逆方向へ。
これがレフト前で弾む間に、老骨にムチ打つ激走で岸本が生還。ベテラン勢スタミナ切れ寸前の大活躍でリードを2点とした。

『初回からこんなに押せ押せで、書くスペースが足りなくなるよ〜!』と儚くも嬉しい悲鳴が出たのも束の間、
ゲームの流れは一瞬にして変わってしまう。
続く2回、2死二塁。クリーンアップを担う“NL爆弾小僧”小田がキッチリとレフト前へタイムリー……が、しかし、
相手守備陣の見事な連係プレーの前に、二走・久保が本塁クロスプレーでタッチアウト……。
追加点が奪えない嫌な流れをそのまま引きずり、その裏怒涛の猛反撃を喰らい4失点。
この辺りは『さすが長尾軍団!』と唸らずにはいられない。これぐらい持ち上げておけば、次回対戦時に優位に運ぶ事は間違いないだろう。

そんなこんなで3回に1点、4回も1点を追加され、傾いた流れをなかなか断ち切れない。
ここで相手は万全を期して大御所“大明神”がマウンドに上がる。
負けてられないNLも、奮闘するエース・松山から、“大魔人”美澤を今季初のマウンドへ送った。
身も心も横綱級のド迫力対決に、球場を取り囲む大観衆のどよめきがこだまする。
しかし、相手投手は“親分美澤”との『堤—水城間都市高速バトル』のリベンジとばかりに緩急巧みな出し入れに最後まで苦しみ、
6回には決定的な4点を追加され万事休す。

まさに現状を思い知らされるかのような完敗でリーグ戦は1勝1敗。果たしてNLに現状打破の秘策はあるのか……。
次回、『逆襲の獅子、遂に目覚める!策士・岸本、起死回生の仰天采配』に、乞う、ご期待!!

■平成22年2月28日/駕与丁公園/開始14時/
○N.ライオンズ 5-4 STARBOSE●

NL :1 0 2 2 0: 5
SB :4 0 0 0 0: 4

勝・松山 1勝0敗
松山=府後
打・なし

【経過】V奪回を目指す今季NLのチームスローガンは“逆襲の獅子”。
しかし開幕前に史上最大級の大激震に見舞われてしまう。
NL史上最強の三塁手と謳われ、NL殿堂入り間違いなしと言われた不動の3番サード、神谷重良が一身上の都合により無念の帰国。
今季もチームの核として活躍を期待されながらもチームを離れる事となり、NLナインと全国のNLファンの涙を誘った。
更にNL不動の5番“石垣からの贈り物”俊三も一時帰国により戦列を離れ、飛車、角落ちの危機的どころか瀕死にも近い状況での開幕スタート。
しかし、落ち込んでばかりはいられない。
“逆境の獅子”になりながらも、リーグ戦を戦い抜く。それが志半ばでチームを去った神谷への餞となるはずだから……。

チーム開幕戦にしてリーグ第1戦。
昨年のリーグ戦で苦杯を舐めさせられた相手だけに、ここは勝ってスタートダッシュをかけたいところだ。
ベンチには小田画伯による神谷の肖像画が飾られた。退団しても、永遠のNLナイン。ここ一番という時に“心はひとつ”で
チームに力を与えてくれるはずだ。

3年連続開幕のマウンドに上がったのはエース松山。
かつて“死球王”として身体を張ってナインの笑いと士気を高めた男が、今では投打の大黒柱として君臨。
神谷とは同級生としてチームを引っ張ってきた。苦楽を共にしてきた男は、『神谷の為にも絶対に勝つ!』と珍しく意気込んでのマウンドだ。
ところが気負いすぎて、初回から闘志が空回り。相手エラーで掴んだ1点リードを持って登板するも、ストライクが入らない苦しい展開。
投球テンポも悪く野手のエラーも絡み、被安打0ながらも4失点……を許してしまう。

反撃したい打線は2回、2死無走者から“アダッチ・サイクロン”安達が今季チーム初長打となる右中間突破二塁打で反撃の口火を斬った。
ムードメーカーの一撃で俄然盛り上がるNLベンチ。
さらに田中が四球で出塁しトップに繋ぐと、NL2010年型打線の目玉“赤い衝撃〜レッド・センセーション〜”久保が
痛烈なレフト前安打を放ち2死ながら満塁の絶好機。
ここで岸本の打球はゴロで投手を抜けセンター前への2点タイムリーか……が、
しかし、ショートが追いつき無念の内野ゴロで得点には至らず。
いきなり不穏な空気に包まれたNLベンチだったが、それを消し去ったのもまた、松山の立ち直りだった。

2回からは目が覚めたかのように本来の球威、制球力が復活。そんなエースの奮闘ぶりに打線が応えないわけがない!
神谷の後を継いだ3番には“NLアラフォー・ホースメンの核弾頭”小田。先頭打者として粘りに粘って四球を選び出塁すると、
『この男に衰えはないのか!?』という脚力を生かして盗塁に成功し、僅かな隙を突いて三塁をも陥れた。
さらに内野ゴロの間に生還し2点差に迫ると、2死無走者から“アラフォー・ホースメンの曲者”吉武が死球を誘発し『アゥチ……』
と外国人選手並みのオーバー・リアクション。『死球を受けたんだぞ』と相手をメンタル面で追い込む辺り、一筋縄ではいかない。
『もうダメ…痛くて走れねぇ…』というやれやれ感を出したのも束の間、次打者“伝説のフーガ”府後の打席でいきなりの初球エンドラン!
これが見事に決まり打球がライトへ弾む間に、一走・吉武が長駆ホームイン。『神谷の穴は全員で埋めるしかない!』
という執念で点差を1点に縮めた。

すると4回、ラストバッター・田中が投手横へのセーフティ・バントを敢行。間一髪アウトになったものの、追い上げムードは俄然高まった。
久保が三塁内野安打で出塁するとここで前の打席、満塁の絶好機を好守に阻まれた“アラフォー・ホースメンの主将”岸本!
無欲無心で振り抜いた打球はレフトをはるかに越えるタイムリー二塁打。今度こそ正真正銘の結果を出し一塁から久保が生還。
遂に同点に追いつき小田の打席で相手エラーを誘っての泥臭ぇぇぇぇ〜決勝点。

『形には構ってられねぇ』とばかりに1点差で勝利をもぎ取り、5年連続開幕戦白星を飾った。